芸術文化関係のNPOは、同じNPOセクターの中にあっても、未だに発展途上にある。「発展途上」ということには、組織的・マネジメント的に未熟であるという意味と、NPOセクター内においても、存在感が薄いという二つの意味がある。そのような中、いくつか目覚しい活躍をするNPOにおいては、組織内のマネジメントと、外部ステークホルダー(中でも地方自治体)との関係作りにおいて優れた能力を見せている。これは、組織としての成熟度が高いということよりは、コア・メンバー(「理事会」と呼ばれる中心人物数人の集合体、理事長など)が個人的に優れた経営の資質を持ち、仕事への責任感に強いことが大きな背景となっている。NPOの発生から成熟にいたる第一の段階でよく見られる特徴である。 特に本研究で注目した外部ステークホルダーの一つである地方自治体との関係においては、担当者レベルでの個人的信頼感の醸成とコミュニケーションが密であることが成功の鍵となり、NPOや文化というものに対して、どうかすると懐疑的である官僚組織を動かすことができている。最大の問題は、これらのコア・メンバーの次世代が育っていないこと、また彼らを支える「応援団」的な理事会組織が整っていないことである。 今後のマネジメント課題は、(1)日常的業務に追われずに、団体としての中長期的ヴィジョンを支える統治機構を持つこと、(2)今日までの成果を引き継ぎそれを伸ばしていけるような次世代リーダーシップの育成、(3)芸術文化NPO間での交流を活発にし、「セクター」としての成長を促進すること、である。
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