研究概要 |
芸術文化関係のNPO(アーツNPO)は近年文化政策において重要な役割を演じるようになっている。NPO全般に見られるように、アーツNPOもさまざまなマネジメントの課題を抱えつつスタートしているが、団体のミッション、事業ドメインの決定、意思決定機構、各部の役割分担、財源確保と人材配置などを含む、重要な戦略的マネジメント(ガバナンスとも呼べる)を創設期の短期間内に行っている。この成功には、団体に何らかの利害関係を持つステークホルダー(地方自治体、企業スポンサー、アーティスト、地域社会、ボランティアなど)からさまざまな資源(資金、労働力、人脈、情報、正統性など)を得たことが大きな要因としてあることが事例研究より明らかになった。ステークホルダーとのやりとりから団体のミッションの明確化・明文化が進んだり、活動領域の設定がなされたり、事業協力先の開拓ができたからである。今後アーツNPOが発展していくための課題もまた、このステークホルダーのマネジメントにこそある。NPOの生存にとって決定的資源を握るステークホルダーとの関係を「相互」依存的なものにすること、組織内部ステークホルダーのニーズにも注意していくことなどが、今後の課題である。また、狭義のガバナンス機構とアカウンタビリティの構造を整理する必要がある。理事会と運営事務局との役割分担,協力体制も現在は明らかになっていない。NPO法上のガバナンスに関する規定にはいくつかの欠陥があるが、NPOとしてはステークホルダー達へのアカウンタビリティを高める工夫、ガバナンスの構造を独自につくっていく必要がある。
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