今年度の研究は、非営利組織(NPO)研究の意義とフレームワークを明らかにすることが課題であった。この課題を、わが国のNPOの現状(とりわけ問題点)およびNPOをめぐる環境を分析することを通じて明らかにすることができた。 わが国のNPOの問題点には、(1)資源の不足、(2)アマチュア的な発想が強いこと、(3)アカウンタビリティの認識の低さ、(4)政府とのパートナーシップの未確立、(5)業績評価の欠如、がある。これらの背景には、わが国においてはNPOを含む、サード・セクターの役割について未だ合意が形成されていないことがある。そのためNPO研究の意義は、社会経済システムのなかにNPOを位置づけ、育成していくための条件を明らかにすることにある。 そこで具体的には、社会経済システムの構成要素として家計(個人、家族、コミュニティ)のほか、公共(政府)セクター、民間営利(企業)セクター、民情非営利(NPO)セクターを想定し、各セクターの特徴(強み・弱み)を比較考量することによって、それぞれの強みによって他のセクターの弱みを補完する、相乗的ミックスを形成することが現代の課題であると理解した。 次に、NPOのマネジメントや会計がどのように役立つのかを検討した。戦略経営システムの確立およびディスクロージャー(ないし外部報告会計)制度の焦点を業績評価に求め、内外の既存の研究、制度、組織を吟味した。とりわけのNPOの発達が遅れている現状では他のセクターによる支援が不可欠であることを鑑み、民間寄付を仲介するインターメディアリの機能、政府とのパートナーシップの確立と行政改革との関係などを考察した。
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