平成15年度は、前年度に引き続き長鎖DNAの高次構造転移の様式、特に分子内相分離構造(多重ビーズ構造)生成メカニズムの理解と分子内相分離状態DNAの光ピンセットによる捕捉及び搬送についての研究を進めると共に、全長約2MbのDNA一本をゲノムDNAとして持っている始原歯という生物を用い、菌体からのDNAの取り出し、DNAの高次構造制御を顕微鏡下で連続的に行うという実験も行った。前者については、分子内相分離構造の長鎖DNAを光ピンセットで捕捉して搬送する事が可能である事を示した。ここでは凝縮剤としてスペルミジン(3価)、スペルミン(4価)、カチオン性界面活性剤(2価)を用いたが、界面活性剤で凝縮させた場合のDNA凝縮部分にもっとも強い捕捉力が働き、分子内相分離状態のDNAが、より容易にトラップされやすいという結果が得られた。後者については、浸透圧ショックによって菌体から露出させたゲノムDNAに対し、光ピンセットで補足してイオン強度に勾配のある場の中を移動させて周囲のイオン強度を変化させて高次構造制御が行える事を示した。これらの結果は、高分子学会において発表した。また始原菌ゲノムDNAの回収及び高次構造制御の実験については、結果をまとめ、現在投稿準備中である。
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