DNA高次構造と生化学的活性の相関を、スペルミンの存在下でDNAが制限酵素によって切断されるかどうかを単分子レベルで調べる事により明らかにした。実験の結果、あるspermine濃度を境に、DNAが急激に制限酵素の切断を受けにくくなっていることが分かった。蛍光顕微鏡法を用いてspermine濃度に対するDNA分子の広がりを調べたところ、制限酵素の切断を受けにくくなるspermine濃度領域に対応して、DNA分子は広がった状態からコンパクトな状態へと変化していることが分かった。次いで、制限酵素ApaL Iによって切断される配列を持つ、88merの相補的オリゴヌクレオチドを合成し、spermine存在下で制限酵素による切断を行ったところ、短いDNAは高次構造変化を起こさないため、高濃度のspermine存在下でも相補的オリゴヌクレオチドは切断された。以上の結果から、高次構造変化を起こし得る程度に十分長いDNA分子は、DNA分子の凝縮転移に対応して、DNAが急激に制限酵素の切断を受けにくくなることが明らかとなった。また、Mbサイズの巨大DNAを細胞から浸透圧ショックによって取り出し、溶媒環境の異なる場へ光ピンセットによって搬送してDNA高次構造を制御するという操作を顕微鏡下で連続的に行うという実験を行い、単分子レベルの顕微鏡下での連続的な生化学実験の手法を提案した。
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