研究概要 |
原子間力顕微鏡(AFM)を使い、タンパク質-タンパク質、もしくは、タンパク質-他分子間の相互作用を生理条件下で高分解能イメージングすることにより、結合の有無および結合量の測定のみならず、結合分子種の判別、結合様式の解析、さらには分子構造変化を直接捉えることを目標とした。 具体的には,1)ストレプトアビジン(SA)の2次元結晶膜化,2)タンパク質規則配列のAFMイメージング技術,3)SA2次元結晶膜へのビオチン化タンパク質の結合と固定,4)カバーガラスなどガラス基板上でのAFM1分子イメージング,5)倒立型光学顕微鏡上でのAFM1分子イメージング,について研究を進めてきた。16年度は,ガラス基板上にProtein AまたはProtein Gを吸着し,これにIgG抗体を結合させ,さらに抗原タンパクを結合させるなど,複合体構造の高分解能AFMイメージングを目指した。しかしながら,ガラス基板上にランダムに吸着した球状タンパク分子を再現性よくAFMイメージングし,高分解能のAFM像を得るのは困難であった。そこで元々の方針に立ち戻り,ビオチン化タンパク質をSA2次元結晶膜に特異的かつ安定に結合させる方法で高分解能1分子AFM像を得ることとした。結合タンパク分子をその形状から同定するには,結合基板であるSA2次元結晶膜の結晶性の高さと一様性が極めて大切であり,AFM観察領域(200〜500nm四方)から非結晶領域や多数の粒界を排除する必要があった。したがって,今年度は課題1)に逆戻りすることになったが,SA膜2次元結晶膜の最適化について再検討した。その結果,基板表面積の8〜9割をSA2次元結晶で覆うことができるようになった。しかしながら,残りの1〜2割は非結晶領域・粒界・露出した下地基板であり,SA膜をビオチン化分子結合基盤として利用するには,さらに2次元結晶による表面被覆率を高める必要があると結論した.
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