研究概要 |
生体の遺伝情報を伝えるDNAは、その大きさが数10μmから数10mmにもおよぶ巨大分子であり、細胞内ではコンパクトに折り畳まれた凝縮状態で存在している。このようなDNAが細胞中、その折り畳み構造をどの様に変化さるのかを解明することは、遺伝子の機能を明らかにする上で重要な課題であると思われる。そこで、蛍光顕微鏡による単一分子鎖観察法を活用することにより、折り畳み構造を決定付けている種々の因子を系統的に調べ,生化学的手法も併用してDNAの高次構造が生物的機能とどの様に関連するのかを追究した。 具体的な研究成果としては、mM以上のアスコルビン酸より、DNAの高次構造が著しい変化を引き起こし、特徴的な部分凝縮構造が生じることを見出した。食事により摂取されたビタミンC(アスコルビン酸)は、脳や免疫関連組織においては他の組織に比べてmMオーダーで高濃度存在し、重要な役割を果たしていることが示唆されているが、コラーゲン合成の補酵素としての働きや、活性酸素除去作用以外の働きについては、実験的な裏付けに乏しく、その役割については未だ不明な点が多い。本研究で明らかになったような、DNAの高次構造に対するアスコルビン酸の作用はこれまで知られておらず、生体内でのアスコルビン酸の役割を考える上でも意義のある研究結果であるといえる。このような、アスコルビン酸のDNAに対する特異な作用についての研究結果は、Eur.J.Biochem.誌に掲載され、表紙としても採用されたことを特記しておきたい。
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