研究概要 |
マウス肝臓細胞由来のアポトーシス誘導因子の構造決定のため、マウス肝臓細胞の大量培養を行ない、いろいろなカラムクロマトグラフィーを組み合わせて精製し、銀染色により単一バンドとなる分子量68kDaの蛋白を得た。この蛋白は、活生化T細胞およびTリンパ腫細胞、Bリンパ腫細胞などリンパ系細胞に選択的にアポトーシスを誘導することが明らかとなった。マウス由来の蛋白であるが、程度は弱いながらヒトのリンパ系細胞にもアポトーシスを誘導することが明らかとなった。しかし、単球/マクロファージ系細胞にはアポトーシスを誘導できず、細胞選択性をもって作用することが示唆された。これらは次の雑誌にて報告した(Immunology, vol.108:116-122,2003)。今年度予定していたDNAレベルにおけるクローニングのため、精製蛋白の一次構造の一部を決定しようと試みたが、ポジティブな結果を得ることができなかった。理由として、糖鎖付加などの修飾を多分に受けている可能性が示唆され、再度精製を行なっておりアポトーシス誘導活性のあるいくつかの蛋白分子を分離精製することができているが、構造決定ならびにシークエンスの決定には種々の困難が予想される展開となってきている。 なお、病原微生物の感染とこれに伴うアポトーシス誘導分子の発現増強については、種々の病原体菌体成分を用いることによってその効果を検討している。最後に、アポトーシス誘導のメカニズムについて、他の因子であるFasL、TRAILなどとの比較検討を行なっているが、カスパーゼ依存性であることにおいては共通であることが示された。以上をふまえ、来年度は先に示された分子量68kDaの蛋白を中心に、cDNAのクローニング・アミノ酸配列の決定、抗体の作製など残された問題について明らかにしていく予定である。
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