研究概要 |
本研究において、我々は昨年度までにアポトーシス細胞を貪食する能力を有するマクロファージ細胞株BAM3細胞の表面抗原に対するモノクローナル抗体を作成し、この細胞の死細胞貪食に影響を与える抗体をスクリーニングし、貪食を阻害する複数の抗体を得た。本年度はこの抗体の認識する分子をアフィニティークロマトグラフイーにより精製し、質量分析により解析したところ、SHPS-1と呼ばれる分子であった。SHPS-1は検討したすべてのマクロファージに高い発現を示し、ターゲット細胞上のCD47分子と結合することにより、アポトーシス細胞をマクロファージにつなぎとめる(tethering)働きを持ち、死細胞の効率のよい貪食に寄与する分子であることが明らかとなった。また我々は、これまでに死細胞の貪食を促進する因子としてMFG-E8を同定したが、そのMFG-E8分子と高い相同性を持つ、Del-1と呼ばれる分子の発現と機能解析を行った。Del-1はMFG-E8と同様にそのC末端のC1,C2damainでアポトーシス細胞上のフォスファチジルセリンに結合し、N末端のEGF-like domainでインテグリンに結合することにより、死細胞の貪食を促進する分子であることが分かった。またDel-1は種々のマクロファージに発現を認めたが、興味深いことに、各々のマクロファージはMFG-E8かDel-1のどちらか一つの分子のみを発現していることが分かった。現在、MFG-E8を含めたこれらの分子の生体内での機能について詳細に検討を行っている。 アポトーシス細胞の貪食に伴う炎症調節の分子機構の解明については、現在までのところ、腹腔マクロファージにおいて貪食後にLPS刺激を行うと、抗炎症作用を有するサイトカインの産生量が5-10倍程度増加することを確認しており、この現象に関与する分子群の同定を進めている。
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