研究課題/領域番号 |
14599007
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢尾板 芳郎 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00166472)
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研究分担者 |
中島 圭介 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60260311)
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キーワード | 変態 / プログラム細胞死 / アポトーシス / 甲状腺ホルモン / 甲状腺ホルモン受容体 / 器官退縮 / matrix metalloproteinase / アフリカツメガエル |
研究概要 |
発生過程には様々な器官が形成されると同時に不要な器官は退縮、縮小する。授乳後乳腺退縮ではMatrix Metalloproteinase(MMP)の発現との関連性が論じられ、その類推で、甲状腺ホルモン(TH)の増加による両生類幼生の変態での尾や鰓の退縮にもMMPの発現の増大が原因と考えられていた。事実、St59-63に細胞外基質分解酵素の転写量が増大するので、細胞外基質が分解され筋細胞が足場を失い"他殺的"に細胞死を起こすという説が支持されていた。一方、昨年度、私たちはドミナント・ネガティブTH受容体(DNTR)をマーカー遺伝子と共に生きた幼生の尾の一部の筋細胞に発現させ、THのシグナル伝達を阻害することによって、筋細胞死はSt62までは自殺的なものであり、St62以降の急激な尾の退縮に伴って他殺的な機構も複合的に作用しているということを示した。 今年度は、幼生尾の器官培養にTHを添加すると、尾の退縮を再現できる系に更にMMP阻害剤を加えて実験した。その結果、尾の退縮は部分的にしか抑制されなかったが、MMP9の活性化は完全に抑制され、脊索の分解も阻害されていた。筋細胞死はTHによる自殺的機構が働いていると考えると、部分的にしかMMP阻害剤が尾の退縮を抑制しないことが理解できる。 また、アフリカツメガエル幼生の尾から樹立され、TH存在下で細胞死を起こす筋芽細胞株のTH処理で発現しているcDNAから無処理のcDNAを差し引いたsubtraction libraryを作製し、960個のクローンを選びだした。それらをdifferential hybridizationで篩いをかけて、明らかにTH処理のプローブでシグナルが強くなるものを31クローンに絞り込んだ。TH処理で発現が増加する既知の遺伝子を除くと21クローンになり、発現量が極めて低いクローンを除いて9クローンにし、塩基配列決定やRT-PCRで3クローンになった。現在、全長cDNAをクローニングし、解析中である。
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