チトクロームc以外の経路でカスパーゼ9を活性化し細胞を死に至らしめる未知の物質をクローニングする目的で、酵母細胞を利用して直接クローニングする方法を開発した。このシステムに適合するヒト細胞由来のcDNAライブラリーで酵母細胞を形質転換した。 結果、全長のカスパーゼ2、3、4及びC末側のAATF (Apoptosis Antagonizing Transcription Factor)断片、N末側のRIP60 (Replication Initiation Region Protein)断片をクローニングした。 全長のカスパーゼ2、3、4は、カスパーゼ9を介せずに細胞膜にターゲットさせた基質シーケンス(S__-)を直接切断した。それに対し、C末側のAATF、N末側のRIP60はチトクロームcを介さずにカスパーゼ9を活性化した。 AATFはその名の通り、D1k (DAP like kinase)、Par-4 (Prostate apoptosis response gene 4)によるアポトーシスを抑制する分子として1999年にPageらによりクローニングされたものである。今回の解析により、C末側のAATFはカスパーゼ9を活性化するが、全長及びN末側のAATFはカスパーゼ9を活性化しないことがわかり、この分子は何らかのメカニズムでアポトーシスを促進する(カスパーゼ9を活性化する)か、アポトーシスを抑制するか決定していると考えられた。 DNAの複製に関与するRIP60の、N末側の断片はカスパーゼ9を活性化したが、全長及びC末側の断片はカスパーゼ9を活性化しなかった。このことは細胞死(アポトーシス)と細胞増殖との関わりを分子レベルで探っていくうえで興味深かった。
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