活性化CD4+T細胞に発現する補助刺激分子OX40は、DCやマクロファージ等の抗原提示細胞上のOX40Lからの刺激を受け、アポトーシスを回避し、その結果抗原特異的T細胞の長期生存やトレランス解除に働くことが明らかにされた。HIV-1感染はCD4+T細胞を枯渇させるが、対照的な働きを持つこのOX40/OX40Lの刺激がHIV-1感染病態にどのような影響を与えるのかを解明する目的で研究を行った。OX40およびOX40Lに対する特異的単クロン抗体ライブラリーとOX40、OX40L遺伝子を導入した種々の細胞株を作製した。HIV-1の潜伏感染細胞株ACH-2や産生細胞株Molt4/IIIBの他に、NL4-3等の急性感染系でのOX40/OX40Lの影響をin vitroの実験系で検討した。ACH-2/OX40細胞をOX40L+細胞やTNF単独で混合培養刺激すると多量のウイルス産生が誘導される。両刺激を同時に作用させたところ、ウイルス産生がなくなった。アネキシンV染色をしたところ、ACH-2/OX40細胞は両者同時刺激では急速なアポトーシスを起こした。このような細胞自殺によるウイルス産生防止は、NL4-3株を急性感染させたMolt-4/OX40細胞とOX40L+細胞との混合培養系でも同様に観察された。OX40を介するシグナルはCD4+T細胞の活性化を促進するが、ある条件においては全く逆の細胞死を引き起こすことが分かった。活性化の場合は、HIV-1の増殖を促進させるが、アポトーシスの場合は、OX40+活性化CD4+TにおけるHIV-1感染は不稔に終わる。この現象は細胞レベルでの抗HIV-1生体防御機構の一つと考えられる。
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