研究課題
基盤研究(C)
多くの硬骨魚類は、皮膚に存在する色素細胞の応答によって体色を背地の明度に順応させる(背地順応)。長期間にわたる順応では、色素細胞の細胞密度が増減する。メダカなどではこの細胞密度調節に、散発的なアポトーシスが関与していることがわかってきた。本研究は、色素細胞のアポトーシスを環境に順応しながらも恒常性を示す皮膚の組織恒常性メカニズムの一部として位置づけ、その調節メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、メダカの皮膚断片およびウロコ皮膚の初代培養系を用いた薬理および細胞生物学的実験から、明背地順応下の皮膚黒色素胞では生存シグナルであるcAMP-PKA系およびMAPK系シグナルが枯渇し、PI3K系シグナルなどにより形態が単純化し、それに続いてアポトーシスが生じる可能性を示唆する結果を得た。次に、長期間背地順応させた胚及び仔魚での黒色素胞密度の変化を調べ、成魚の黒色素胞と比較した。その結果、ある程度成長した仔魚や成魚ではアポトーシスが細胞密度調節に関わるが、胚及び初期の仔魚ではアポトーシスがみられず分化によってのみ細胞密度が調節されていることが示唆された。胚細胞の初代培養系で分化した黒色素胞のアポトーシス感受性が成魚由来の黒色素胞に比べて低いという結果も得た。分化直後の黒色素胞ではアポトーシスを誘導するメカニズムに差があると考えられる。さらに、メダカ皮膚から同定された新規RGSタンパク質(MeRGS3L)および脳下垂体中葉ホルモンであるソマトラクチンが色素細胞のアポトーシスに関わる因子である可能性が示唆された。また、ゼブラフィッシュを使用して、背側皮膚表層だけでなく、体側皮膚深部の色素細胞も背地順応により細胞密度を増減させることを見出し、黒色素胞および虹色素胞のアポトーシスが縦縞模様に影響することを示した。
すべて 2005 2004
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J Exp Zool (in press)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 101
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