韓国研究会談話録の記事分析、在韓日本人発行の新聞・雑誌および在韓日本人の出版物の調査をおこなった今年においては、以下のことが明らかになった。 (1)幣原坦の朝鮮儒学や箕子、関羽廟に関する報告、鮎貝房之進の薩満教習俗報告と、韓国固有文学の歴史を紹介した韓文学は、朝鮮学術研究史上の意義は大きい。 (2)日本人による新聞は、実物の確認できないものを含め、40以上を数えられる。 (3)出版図書は、桜井義之の『朝鮮研究文献誌』と末松保和編『朝鮮研究文献目録』により現物確認をしながらリスト作成中である。なお、幣原の『韓国政争志』、鮎貝の『雑巧』、前間恭作の『古鮮冊譜』『韓語通』など、韓国研究会メンバーの著書は、注目すべき業績といえよう。 (4)各自任務を持ち現地体験やそれに基づいた調査研究を報告しあったサロンのような存在としての韓国研究会と、『韓国研究会談話録』の存在は、当時韓国人の啓蒙団体の活動とともに考えると、近代都市ソウルの知識人の活動の一面を共有していたものと評価できよう。 (5)『韓國地理風俗誌叢書』収録資料を通じて、大韓帝国期の政治・経済・社会的状況把握ができて、当時の学術文化研究の知見を広げることが出来た。 (6)韓国研究会に先だつ3・4年前に「朝鮮会」が出来て機関紙『朝鮮月報』を出していたことがわかった。文部省派遣韓国留学生第一号であった金沢庄三郎、前間恭作らの論稿が発表されているという。 なお、一年目の今年度の予算は、パソコン一式と『韓國地理風俗誌叢書』(200冊)を購入し、現地調査と資料収集のための韓国出張を行った。
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