1.本研究課題に基づき、主に映像メディアにおけるモーション表現の考察及びバウハウスの再考を実施した。 研究成果は、三つの学術論文に集約されており、英文の(1)「Media Literacy Education in Art : Motion Expression and the New Vision of Art Education」においては、本研究の全体像を示すような概要的なまとめ、(2)「ヨハネス・イッテンの造形教育とその今日的意義について」は、バウハウスの再考及びモーション表現の造形原理としての理論的補完、(3)「映像メディアにおけるモーション表現の美的構造について」は、制作に関わる造形原理の継続的な考察に向けての基礎固めとなっている。 上記の(1)、(2)、(3)を総合すると、モーション表現の造形原理としての歴史的な成り立ちをバウハウスに求めていくという視点、単なる機能主義・合理主義ではない「表現」の問題に関して、全人教育・体験教育を実施したバウハウス教師イッテンの可能性を見いだしたこと、現在・未来的な視座において、若者文化の一つ、クラブ・シーンでのVJ(ヴィジュアル・ジョッキー)の活動に新しい視覚表現のあり方を検証しようとしていることが、今年度の本研究における中心的な成果である。 2.モーション表現の実践 前年度に引き続き、インターネット上で閲覧可能なFlashアニメーションの制作によって、視覚的なモーション表現と音楽との関連づけや、動きを伴う2Dおよび3D表現の組み合わせの可能性等を実践研究とした。制作した作品は、「Moonlight Chaser-Trance Loading」と題したミュージック・クリップであり、ドイツでのハンブルク映画祭2003における「Bitfilm Festival」のFlashアニメーションの部門においてノミネートされ、現地での映画館上映及びインターネット上での公開がなされた。 また、クラブ・シーンでのVJ活動も実験的に実施しており、今後のケース・スタディとして、さらなる考察を加えることになると予想される。
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