本研究は、a.)中近世の物語絵画作品の実地調査、b.)画像資料のデータベース化という基礎作業部分(1)と、そこで得られた知見をもとに物語絵画のメディア変遷についての考察を深める(2)という二段階で構成される。三ヵ年の研究計画の内、2003年度は、(1)の基礎作業分に関しては、a.東京国立博物館蔵の室町絵巻作品、b.出光美術館蔵の室町絵巻作品、c.個人蔵(京都)の参詣曼荼羅および子供の肖像画作品、d.サントリー美術館蔵の御伽草紙作品、e.神奈川県立博物館蔵の室町絵巻および花鳥画作品、f.栃木県立博物館蔵の室町絵画作品、9.京都国立博物館蔵の室町絵巻作品、h.奈良国立博物館蔵の神道絵画(垂迹画)作品、i.個人蔵の白描源氏物語画帖セット等の調査見学および、j.春日大社若宮おん祭関係資料の収集を行い、画像資料のデータベースを作成した。(2)の考察部分としては、1)『中世日本の物語と絵画』(並木誠士氏と共著、放送大学教育振興会、2004年3月)、2)「The Present State of Research on Ancient and Medieval Art History and Related Issues」(『ACTA ASIATICA』THE TOHO GAKKAI、2003年9月)計2篇の論考を上梓した。画像資料データベースの作成にあたっては、IT技術者の協力を得て、全図スクロールや部分図様の名付けなど、教育用途をも勘案した構成とした。既に教育現場において使用しており、E-ランニングにおける画像コンテンツの可能性、問題点を確認してもいる。次年度は、この経験を生かし、画像コンテンツに関わる学習会を組織する予定である。
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