研究概要 |
体臭が親子関係の発達的変化といかに関連するかについて,発達行動学と生理学の立場から検討を行った。発達行動学的な研究に関しては,質問紙によって小学生・中学生・高校生・大学生とその保護者に対する質問紙調査を行った。身体各部に対して,親・子がそれぞれ自分の匂いと子ども・親の匂いについてどのように快・不快感情を持っているかを評定してもらったところ,身体各部のなかでもとくに口・足の裏・脇の下の匂いを不快に感じており,それは自分自身の匂いも相手の匂いも同様であることがわかった.さらに,父親の匂いが子から強く拒否される傾向がある一方で,母親の匂いに対しては子からの拒否が非常に軽微であり,その不快度は子が自分自身の身体の匂いに対して感じる不快感よりもはるかに低いという興味深い結果を得た.ただし,事例数が必ずしも十分でないため,今後さらにデータを補充し,発達的な傾向を詳細に検討ずる予定である. 生理学的な調査では、思春期以前の子供の匂いは母親に快刺激となり接近行動を促すが、思春期以降の子供の匂いは不快刺激となり接近行動を抑制することによって、子離れを促すと考え,この仮説を検証すべく、子供の匂いが母親のストレス反応にどのような影響を与えるかを調べた。ストレスはストループテストを用いた。母親にストレスを与えると、ストレスホルモンであるコーチゾールの唾液中レベルが上昇した。次に、ストレス負荷時に思春期以前の子供の匂いを嗅がせると、母親の唾液中コーチゾールレベルの上昇を抑制したが、思春期以降の子供の匂いは唾液中コーチゾールレベルの上昇を抑制しなかった。以上のことから、思春期以前の子供の匂いは母親のストレスを緩和するが、思春期以降の子供の匂いは母親のストレスを緩和しないことが示唆された。
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