研究概要 |
当該研究の目的は、職場の人々や組織自体に直接的・間接的危害を加える行動や、職場の業務に悪影響を与えたり組織の効率的機能を損なう行動に至る職場での様々な反社会的行動について、それらの分類と規定要因を心理学の視点から検討することである。 本年度の研究成果は、以下の3点に要約される。1.先行研究を調査し、具体的な職場における反社会的行動を収集した。2.日本企業の従業員10名を面接調査し、職場における反社会的行動についての事例を収集した。3.1と2で収集された行動をもとに、48項目からなる「日本版組織反社会的行動尺度」を作成し、その尺度とそれに関連する他の測定項目を掲載した調査票を作成した。4.質問紙調査を実施し、調査結果の分析を行った。調査は調査専門企業へ依頼した。調査手続きは以下の通り:(1)電子メールにより、現在会社や組織に勤務している15,000名に対して調査票への回答を依頼した。(2)調査への回答を承諾した324名に調査票が郵送され、全員の回答が回収されて、分析の対象となった。 分析は現在も進行中であるが、質問紙調査の結果の概要は以下の通りである:(1)組織反社会的行動尺度の項目を因子分析した結果、4因子に集約された。組織において反社会的行動を行いやすかったのは、(2)職階の低い回答者よりも高い回答者、(3)職場で不公正感をもっている回答者、(4)自分の職務役割に達成感をもてない回答者、(5)職務上ストレスの原因(ストレッサー)の多い回答者、(6)組織に感情的にコミットしていない回答者、転職するあてがないので仕方なく今の職場にいる回答者、という結果となった。
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