【目的】 本年度は研究初年度に当たり、研究目的1(仮に、Pervinの多次元的定義を枠組みとして、パーソナリティ諸理論を整理・体系化する。)を中心として資料収集と予備的分析を行った。 具体的には、人間性をどのように考えるかについて、「人間性モデルに対するアンケート(2002年度版)」を作成し、大学生を対象として調査分析した。 【方法】 調査票の構成は(1)人間性を善と考えるか悪と考えるか(7件法、および理由の自由記述。以下同様)、(2)性格は変わらないと考えるか変わると考えるか、(3)人間にとっての現在、過去、未来の相対的重要性について、(4)行動(実際に行動し、体験すること)、認知(現象の判断や、自己や外界をどのように理解するか)、感情(快・不快などの多様な感情)の相対的重要性について、(5)性格の規定要因としての遺伝(素質)と環境(養育)の相対的重要性について、等で構成した。被調査者は有効回答数96名(男性46、女性44、不明6)であった。 【結果の概要】 (1)人間性を善と考えるか悪と考えるかについては、平均5.22(どちらかと言えばよい)、(2)性格は変わらないと考えるか変わると考えるかについては、4.04(どちらとも言えない)、(3)人間にとっての現在、過去、未来の相対的重要性については、現在の未来では4.76(どちらかといえば現在)、現在と過去では7.25(非常に現在)、過去と未来では4.53(どちらかといえば過去)が重要、(4)行動、認知、感情の相対的重要性については、行動と認知では5.39(どちらかといえば行動)、認知と情動では4.53(どちらかといえば認知)、行動と情動では4.72(どちらかといえば行動)が重要、(5)性格の規定要因としての遺伝(素質)と環境(養育)の相対的重要性については、2.79(どちらかといえば環境(養育)が重要)と答えていた。従って、現代の大学生は、人間性は良くて、性格は変わるとも変わらないとも言えず、現在志向で、行動と環境を重視するようである。 今後の課題としては、(1)人間性の量的解答と理由(質的分析)の関連性、(2)同時に測定した性格検査(NEO-PI-R、クロニンジャーの気質と性格の7次元モデルなど)との関連性の分析、(3)追加資料の蓄積などが、今後の課題である
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