高齢者が行う自律的な「否定表明」が、どのような「関係的調和」や「集団的統合」の下でみられるかを明らかにすることを目的とした調査を実施した。調査内容は福祉サービス利用及びその利用に関わる苦情、感謝、不満、満足、改善要望、生活状況(経済的自立度、身体的自立度)、社会・生活意識、社会福祉サービスについての認知、社会福祉サービス利用意識、家族状況、属性を中心に構成された。とくに社会福祉サービス利用に関わる苦情、不満、改善要望については、その内容を「制度的内容」、「金銭的内容」、「人的内容」、「時間的内容」、「サービス内容」等とそれぞれの「強度」について細分項目を設定した。また「状況統合」のために高齢者が行う「配慮」(方法)に関する設問については自由記述形式で聴き取った。また「否定表明(苦情や不満等)」と同時に「肯定表明(感謝や満足等)」についても問い、高齢者が「関係的調和」や「集団的統合」をいかに形成し、維持しているかについても分析を試みることができるようにした。調査対象者は60歳〜75歳までの高齢者で、k市内に居住し、社会福祉サービス(主として「デイサービス」「ホームヘルプサービス」)を利用者する43名である。また社会福祉サービスプロバイダー側のスタッフ12名にも、調査対象者に関するインタヴューを並行して行った。調査データに関する第一次的な集計をおえた段階では、「否定表明」をすることが日常的には行われていない。むしろ「配慮」が日常的になされている。「否定表明」がなされる場合は「人的内容(特定の個人)」にむけられることはほとんどなく、「制度的内容」や「第三者」にむけたものとなっている。「否定表明」の中では比較的「金銭的内容」が多い。また「否定表明」が強くなされる場合は「関係的調和」を条件として行われるのではなく、むしろサービス利用関係自体が「不調和」である場合になされている。
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