昨年度はニュース流通の構造的変化を確認することに重点を置いて調査研究を進めたので、今年度はおもにニュースの利用形態の変化について調査研究を行うこととした。 メディア環境の変化がニュースの流通とその利用に影響を与えているが、この観点からすれば、インターネットを通じたニュース利用も一部で日常化しつつあり、すでに新聞記事やテレビニュースもウェブサイトを通じて閲読されたり、視聴されたりしている。NHK衛星、ケーブルテレビ、スカイパーフェクTVなどに加入している場合は、視聴するニュースのトピックやジャンルによってCNNやBBCなどの海外のニュース専門チャンネルの番組を視聴している。また、インターネットの利用においては、yahooニュースやMSNニュースなどのサイトから横断的にニュースを検索して利用する行動もみられる。 こうした変化は、国の内外を問わず、最新のニュースや突発的な出来事、スポーツ情報やエンターテイメント情報など、その時々のニュース利用が、新聞紙面の個別の記事を読む行為や、放送局のニュース番組を見る行為とは異なる利用形態が現われていることを示唆している。言い換えれば、現在において支配的である新聞社やテレビ局といったマスメディアによってパッケージ化されたニュースの流通や利用とは異なる、社会的な出来事やテーマ・関心に従ったニュースのリンクとアクセスという新たなニュース環境が形成されつつあることを意味していよう。したがって、こうしたテーマ型ニュース検索利用は、メディアのデジタル化、コンテンツのグローバル化、インターネットのブロードバンド化など、現在進行している環境変化に伴う初期の微動現象として位置づけることも可能であろう。 今後においても、ニュースにかかわるメディア-流通-利用の相互連関の考察をさらに進め、グローバル化するニュースの特質や役割を検討していくこととする。
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