大阪市西成区ならびに東京都台東区において、生活保護受給世帯の動向ならびに生活保護受給世帯の介護保険制度利用状況に関して、統計資料や関係者(行政、介護サービス事業者等)へのヒアリングなどによって基礎的な資料や情報を収集した。また、大阪市西成区および東京都台東区をサービス提供区域とする全介護サービス事業所を対象にアンケート調査を実施するため、質問紙の設計とサービス事業所数ヶ所を対象に予備調査を行なった。さらに、これらの事業所に対して、サービス利用者への同行調査の依頼し、15年度から実施する介護保険制度利用世帯に対する聞き取り調査の実施体制を整えた。 一方、大阪市西成区や東京都台東区以外で生活保護受給者が多い福岡県北九州市や和歌山県御坊市において、生活保護受給世帯の動向や介護保険利用状況の現状と課題について、聞き取り調査を実施した。北九州市は「北九州方式」と呼ばれる独自の保健福祉体制を構築しており、保健師とケースワーカーが連携していることに特徴がある。生活保護業務や介護保険業務においてこのような体制がもたらす効果と課題について検討を行なった。 現在までに、生活保護受給者の介護保険利用における課題として、家族や親族関係が疎遠であるケースが多いことや、家屋など生活基盤としての資産が制限されていること、介護保険の給付範囲を超えるサービスが受けられないこと、などが強く影響を与えていることが明らかになった。特に困難な問題は、医療保険未加入のために介護保険の被保険者とならない特定疾病による要介護保護者のケースであり、この場合はケアマネジャーの役割をケースワーカ-が担うことになるが、現状では十分な対応が行なわれていないことが判明した。 調査の中で、生活保護受給者よりもむしろボーダー層の介護保険制度の課題のほうが深刻ではないか、という指摘があったが、これについては今後の調査研究計画の検討課題としたい。
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