本研究では、1.生活保護受給世帯に関する基礎調査、2.介護保険事業者に対する利用世帯に関してのアンケート調査、3.介護保険利用世帯に対する聞き取り・観察調査、4.市民団体やNPOの介護実践に関する調査、の4つの調査を実施することとしていたが、これに加えて、5.主要自治体の制度運営状況に関する聞き取り調査、および、6.インターネットの介護保険に関する掲示板に寄せられた相談内容の分析、を行った。 1.では、既存統計資料から全国的状況を概観し、現在行われている制度見直しの議論との関連から、本研究テーマの位置づけを確認した。2.では、大阪市西成区、阿倍野区、浪速区と、東京都台東区、墨田区、荒川区にある生活保護法の指定を受けている居宅介護支援事業者を対象に、2004年1月にアンケート調査を実施した。対象事業者数は215で、そのうち回答があったのは44事業者であった。3.では、2004年2〜3月に、東京都山谷地区と大阪市あいりん地区でそれぞれ4ケースを訪問し、住宅・介護環境とサービスの提供状況を調査した。4.では、山谷地区とあいりん地区のNPO等民間事業所を訪問して聞き取りを行った。5.では、東京都、大阪市、北九州市、御坊市において、生活保護受給世帯の動向や介護保険利用状況の現状と課題について聞き取りを行った。6.では、介護保険実施前年の1999年後半から2003年までに寄せられた相談をテーマごとに集約し現場の混乱状況を知る手がかりとした。 結果として、生活保護受給者の介護保険利用においては、利用世帯の家族構成(家人がいないこと)、住宅環境(資産の制限、老朽・狭小住宅での居住)、利用限度額(給付範囲を超えるサービスが受けられない)、「みなし2号」の扱い、などにおいて課題があることが明らかになった。調査の中で境界層の課題のほうが深刻であるという指摘があり、これについては今後検討が必要である。
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