研究概要 |
本年度の主な研究成果は、イギリス調査(平成14年9月24日〜10月6日)において、教育経営のコンサルティングや業務支援を行う企業であ「教育経営組織」(Education Management Organization)を訪問したことから得られた。 その1つはNord Anglia Education Plc.である。同企業は1987年創設で2001年の売上高は6660万ポンドであり、契約社員は約2千人である。同社はインターナショナル・スクールの経営や公教育事業のアウトソーシング事業を行っており、特に後者は学校事務の代行から問題を持つ地方教育当局(LEA)や学校の業務代行をおこなっている。例えばHackney LEA, Sundhill LEAがある。 その2はSerco QAAである。同社はBrabdford LEAの業務を委託され、Education Bradford社を立ち上げ、10年契約で同地方教育当局の再建にあたっている。このLEAは教育活動の低迷から教育水準の改善がおこなわれず、失敗LEAとして民間企業に委託された事例である。 以上、イギリスにおいては、1980年代以降の新保守主義の成果である民営化・市場化政策が、労働党政権においてもその基本が継承され、教育政策においても積極的に進められていることがわかった。特に、民間の教育産業が従来、公共セクターが担ってきた教育業務、特に深刻な問題を抱えるものについて、それらを引き継ぎ、「公私の協働」(Public Private Partnership)の事業として教育改善を図ろうとしている実態の一部が解明された。
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