本年度は、多重知能説を中心に脳の機能系と諸能力との関係について、文献研究により、学力モデルの試案を作成した。その内容は、空間能力、身体-運動能力、言語能力、論理的-数学的能力、自己観察・管理能力、自然との共生能力、音感能力、および人間関係能力の8つからなっている。これらの諸能力を伸長させるためのカリキュラム開発について、次の手順により教科の再編成案を作成した。それは、言語系(国語・英語)、自然系(数学・理科)、社会教養系(社会科・道徳・特別活動)、健康生活系(保健体育・家庭科・生活科)、および芸術系(図画工作・音楽)の5つを構成し、これを「系の学習」と称して、子どもに一定のスキルを習得させる短期集中型の単元案を開発した。 その結果、通常の教科学習とは異なる次のような児童生徒への効果を認めることができた。第1に、情緒面と理性面を融合させる学習活動が彼らの学習意欲と記憶保持に有効であること、第2に、表現、発表などを行うことにより、学習への集中力が増し、より上級のスキル・アップに向けた階段的な習熟がみられること、第3に、各系において得手・不得手を持つ者に対して、その得意な系の学習から導き入れる活動を行う方が、より継続的な学習を促す傾向が示されたことである。
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