14年度に引き続き、多重知能説をもとに試作した学力モデルの実践的検証を試みた。すなわち、言語系、自然系、社会教養系、健康系、および芸術系の五系からなる「系の学習」を構成し、脳の機能系に即して児童生徒に知的・実践的なスキルを習得させる単元を試行した。15年度はとくに中学生を中心にその効果を質問紙調査し、統計的分析を行った。また、小学生の抽出児を対象に追跡的な観察を行った。 その結果、学力モデルに関して次のような知見が得られた。(1)児童生徒の各系の学習への行動傾向を相関分析、因子分析、およびクラスター分析にかけて解析したところ、自然系と芸術系の関連が最も強く、次いでこれに芸術系が関連する特徴をもつこと、(2)言語系の適性は他の系から独立しており、また社会教養系も他の系とは異なっていること、(3)これらの関連が「系の学習」の単元内容によるものか、あるいは児童生徒の適性反応によるものであるかは更に慎重な吟味が必要なこと、(4)この結果からみれば、脳の機能局在論による学力モデルの他に、システム機能局在論によるモデルを設定することが考えられ、脳発達の観点もとり入れて、学力モデルの精緻化を図ることが可能であり、(5)とくに前頭連合野の能力を中心とした脳機能の低下について、状況証拠ではく、10歳頃までの学習能力の獲得過程に関するモデルとその確認調査が重要であることなどである。
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