本年度は、(1)先行研究の検討、(2)全国のブラジル人学校の調査、(3)ブラジルにおける学校教育の視察、(4)調査対象のブラジル人学校の予備的な調査、を実施する予定であったが、調査対象のブラジル人学校の協力体制の都合もあり、(3)(4)に重点を置いた研究となった。 調査対象のブラジル人学校「ネクター」(愛知県豊田市保見団地内)での教職員や保護者、児童・生徒のインタビューを通じて、すでに日本国内で外国人児童・生徒の教育を担う一外国人学校が、具体的にどのような経緯で開設され、どのように運営されているのか、また、どのような課題を抱えているのかなどについて、基礎的な予備調査を完了することができた。日本の公立小学校・中学校に通う児童・生徒が、放課後にブラジル人学校で母語教育を受けたり、帰国準備としてブラジル人学校へ転入するなど、すでに多様な学習要求に外国人学校が応えつつあるとうことが明らかとなった。 ブラジルにおける調査では、ブラジル人学校「ネクター」を卒業または転校してブラジルに帰国した児童・生徒6名とその保護者のインタビュー調査を中心に実施し、帰国後の再適応の様子や日本での学習経験などについて調査した。一様にスムーズに再適応し、日本国内でのブラジル人学校での教育を高く評価していた。日本の公立学校に通いながら補習学校としてブラジル人学校で母語教育を受け、中学校卒業後に帰国してブラジルの高等学校に通う生徒からは、ブラジル人学校での教育なしには、現在の進路選択や職業選択(医学生を目指している)はあり得なかった、との貴重な証言も得られた。
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