本年度は、(1)調査対象のブラジル人学校のカリキュラムに関わる調査・研究、(2)全国のブラジル人学校の調査(継続)を実施した。当初、ブラジルにおける調査・研究を実施する予定であったが、訪問調査予定の帰国児童・生徒の大半が再来日するという予期せぬ事態が起きたために取りやめ、再来日した児童・生徒の追跡調査を日本国内で実施することとした。 (1)については、愛知県豊田市保見団地内にある、ブラジル人学校「ネクター」において、教科教育のカリキュラムと児童・生徒の学力形成について調査を実施した。その結果、理科教育においては、科学的現象やその発生のメカニズムに対する興味関心が低いことなどが明らかとなり、実験や実験キット等を使用しての体験的学習の必要性があることがわかった。また、社会科教育においては、児童・生徒および保護者の日本の文化や社会制度への関心は高いものの、実際にはカリキュラムの中に十分に位置づけられておらず、児童・生徒および保護者の学習要求とのズレがあることがわかった。 (2)の全国のブラジル人学校の調査は、ほぼ全校の訪問調査を実施し、現在、結果の整理と追加調査の準備中である。これまでの調査では、顕微鏡一つない劣悪な教育環境に児童・生徒が置かれているなど、財政面できびしい学校経営を迫られているにとどまらず、近隣の日本人コミュニティーや地方自治体と十分なコミュニケーションがとれていない学校が多くあることが明らかとなっている。
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