2年間の研究の最終年度にあたり、これまでの研究成果を一冊にまとめた。『教育システムにおけるソーシャル・キャピタル形成の理論的及び実証的研究(成果報告書)』(平成16年3月刊)は、論文2本、それに関連したアメリカ文献の翻訳(試訳)2本を中心とし、日米におけるソーシャル・キャピタル関連の文献リストを添付した報告書である。 2本の論文は、「ソーシャル・キャピタルと教育システムーロバート・パットナムの所説を中心に」、「シカゴ学校改革と関係的信頼」をそれぞれタイトルとする。前者は、『法政大学キャリアデザイン学部紀要』創刊号、平成16年3月刊に掲載された。同論文では、政治学者でありソーシャル・キャピタル研究者としても著名なパットナムが、教育パフォーマンス(学業達成)と地域社会のソーシャル・キャピタルとの相関を実証した論文を批判的に紹介している。 後者の論文では、シカゴ学校改革に関するアンソニー・ブライクたちの調査実証研究を素材にしながら、ソーシャル・キャピタルの構成要素の一つである信頼について検討した。ブライクたちが概念として提起した関係的信頼(relational trust)が、社会心理学者の山岸俊男のいう「安心と「信頼」の2分論をこえて、第3の信頼のあり方を示すのではないかと問題提起することになった。 なお、アメリカ文献の翻訳は、パットナムのオリジナル論文とブライクたちの共著(『学校の中の信頼Trust in Schools』)の第二章を試訳したものである。いずれも先の2論文をより良く理解するための材料である。
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