通級指導教室における言語障害児への支援に関しては、従来、子どもの言語症状の改善や、言語能力の伸張を図ることが主要な目標とされ、それに向けてのいわゆる治療教育的なプログラムは、これまでの実践研究の蓄積によりある程度構築されてきている。しかし、症状の改善が困難な場合もあり、言語障害を受容しながら生き生きとしたコミュニケーションをする、言語障害の改善にいたらなくても本人の暮らしにくさが解消される、といったことへの支援、すなわち生活充実指向型の支援が必要であり、それに向けたプログラムの構築が本研究の目的とするところである。前年度、実践研究・実践報告の検討から、子どもの障害観ないし自己観、周囲との関係、子どもの暮らしの要素、等を支えたり、拡げたりすることに視点をおいた実践の抽出、及び生活充実指向型支援の実際例を訪問調査した。今年度は、継続して、文献からの資料の抽出を行うとともに、各地の事例における、生活充実指向型支援のありようを追跡調査し、各事例における実践経過の収集・検討を行った。その中で、治療教育的な内容ではなく、あくまで生活充実すなわち暮らしへの支援を考えたとき、実際の日常生活において、ある子どもとその保護者が、どんなことに困っているのかを具体的に拾い上げ、その各々に対して、通級指導教室ではどんな支援ができうるのかを検討する作業が重要だと思われ、試行した。この作業を通して通級指導教室は子どもと保護者の実際の暮らしに対して何ができるのか、生活充実指向型の支援とはどのようなものなのか、前年度に抽出した上記の障害観、周囲との関係、等を支えるという、抽象度の高いレベルから、より具体的レベルで説明し得る、実践し得る糸口が見えてきたところである。本研究は萌芽研究であるので、次年度、もう少し明確にした上で、生活充実指向型教育支援プログラムの内容の提言にまで至れればと考える。
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