研究概要 |
本プロジェクトは、主として米国史料によって、インドの経済政策の形成において米国が果たした役割を明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度に引き続き、米国の図書館と文書館で原史料を発掘する作業を2回おこなった。 第1回目の史料調査は、2003年10月26日から11月13日までワシントン近郊の米国国立公文書館分館(NARA II)と、ニューヨーク州ハイドパークのルーズベルト図書館で実施した。国立公文書館では、国務省、財務省、経済戦争局(BEW)等のファイルを調査し、武器貸与法のインドでの実施状況、印英間のスターリング負債返還交渉に対する米国政府の態度、印米間の通商条約締結交渉の経過、1950年代のインドへの経済援助プログラムの決定過程などをかなり解明することができた。ルーズベルト図書館ではBerle国務次官補の文書等を閲覧し、40年代における米国のインド政策の基本的スタンスを知ることができた。 第2回目の調査は私文書に集中することにし、2004年2月29日から3月15日まで、米国議会図書館、ヴァージニア大学、イェール大学及びプリンストン大学において、Loy Henderson, Cordell Hull, Henry A.Wallace, Louis Johnson, Chester Bowles, John Foster Dulles等の文書を調査した。またフォード財団のインド援助プログラム関係文書を閲覧することができた。これらの調査では、冷戦のために印米関係が急速に悪化する中でも、国務省中枢部はきわめて冷静なインド認識を持っていたこと、フォード財団がネルー首相と緊密な関係を保ち、インドの経済政策の形成に一定の影響力を保持していたことなど、興味深い事実を明らかにすることができた。
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