研究概要 |
1 日本古代の戸籍等に基づいて,人口変動のシミュレーションに必要な変数のデータを収集するために,代表的な戸籍による個人別データベースを作成した。その結果,人口ピラミッドの作成が可能となり,平均寿命,再婚の実態などが明らかになって,シミュレーションに必要な変数のデータを得ることができた。また,古代の平均寿命の短さが,より明らかになり,日本の古代社会像を再点検する見通しが得られた。 2 人口変動のシミュレーションを,チンパンジーや,採集・狩猟民,日本古代などのいくつかのモデルについて作成した。現状では,チンパンジーや採集・狩猟民については,推定に基づくモデルにとどまっているが,これまでほとんどはっきりした人口構成や寿命についてのイメージがなかったなかで,一定の範囲における推定が可能になった。シミュレーションは,数式を用いるものではなく,個人を生成する形をとり,偶然性を考慮に入れた,ボトムアップで非線形のモデルとした。 3 人口変動のシミュレーションから,外婚制が個々の集団の人口変動の調節機能を果たしていることを推定し,その実態についてのシミュレーションを行った。 4 上記のシミュレーションの結果,寿命などからみた原始・古代社会の過酷な実態が明らかになり,これまでの「豊かな石器時代」などのイメージに変更をせまるような結果が得られた。
|