本年度は研究期間の初年度にあたる。そこで、研究を行う上で必要な設備備品をそろえ、研究体勢をすみやかに整えることを目指した。途中研究機関の変更があり、時間をロスしたが、予定していた研究環境はほぼ実現できた。 研究内容に関しては、やはり初年度ということがあり、基礎データの構築に重点を置いた。具体的には、平安期の文学作品からの用例抽出作業を行なった。『蜻蛉日記』『枕草子』『源氏物語』を資料に用い、「人」を主要部とする名詞句の用例を抽出していく作業であるが、『蜻蛉日記』『枕草子』からは全用例の抽出が完了している。現在、『源氏物語』での調査の途中であり、全体量の3分の一ほど抽出したところである。この作業は、来年度も引き続き行う。平安中期の文学作品から可能な限り用例を抽出したいと思っている。 また、用例調査と並行して、理論的研究も進めている。いくつかの学会、研究会において、現代語、他言語の名詞句研究の成果を吸収してきた。また、文献調査も行った。その結果、当初の計画段階では、視野に入っていなかった、いくつかの分析の観点を知ることができた。それらは、データ解析の段階で是非とも使ってみたいと思う。 以上、総括すると、初年度の目標はほぼ達成されたと言える。なお、本研究の成果の一部は平成15年度国語学会春季大会シンポジウムにてパネラーとして発表する予定である。
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