本年度は研究期間の2年目にあたる。前年度、研究環境の整備につとめ、同時に研究の理論的な見通しを立てた。それを承けて、本年度の研究を次のようにおこなった。 本年度の研究で重点を置いたのは、1)基本データの作成、2)分析方法の確立、である。 1)基本データの作成 上代語資料、中古語資料から「人名詞句」の用例を抽出し、入力する作業を進めた。入力作業を完了した資料は、『万葉集』『蜻蛉日記』『枕草子』『源氏物語』である。用例抽出、入力作業は、来年度も引き続きおこなう必要があるが、分析の中核となるデータは、今年度の研究で出そろった。 2)分析方法の確立 他の研究者との情報交換等によって理論面の考究を進め、分析方法を確立した。すなわち、「述語の文法的特徴」「時間表現」「場所表現」「人の数量性」である。この観点を用いて実際に分析をおこなってみた。その成果の一部は、平成15年度国語学会春季大会シンポジウムで口頭発表した。今後さらにデータを拡大して、分析の妥当性を検証したい。 なお、研究の途上でいくつかの発見があった。たとえば、本研究の分析方法は助動詞「む」の分析に有用である。また、人の畳語形「人々」の分析を通して、名詞の数概念の分析に道を拓く可能性がある。それらのテーマについては次年度研究の課題としたい。 以上が本年度における研究実績の概要である。
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