研究概要 |
本年度は、イギリス19世紀「社交界小説(fashionable novel」の研究を始めるに当たり初年度であることもあって、このテーマに関わる研究計画の輪郭の把握と基本的資料の収集に努めた。主な研究活動としては、日本国内の大学図書館および各種の研究機関への出張による資料収集と、海外出張による資料収集が挙げられる。玉井〓は、日本国内および海外から入手できる基本的資料をまず整理し、さらにそれらの資料をもとにして「社交界小説」を研究するための計画を作成する作業を推進した。服部典之は、同研究のために、10月末から11月始めにかけて連合王国とイタリアに出張し、それぞれの国における主要図書館と研究機関を訪れて基本的資料の収集を行った。 これらの研究成果の一部は、「杜交界小説」の代表的な小説テクストを選定して編集した7巻からなる作品選集,Regency Dandyism and the Fashionable Novel, Novel, Part Iとして、日本の出版社(本の友社)から刊行された。この選集には、Robert Plumer Ward, Tremaine ; or, The Man of Refinement(1825), Thomas Henry Lister, Granby(1826),Benjamin Disraeli, Vivian Grey(1827),Marianne Spencer Stanhope, Almack's(1826)の計4作の「杜交界小説」が収録されている。 これらの「社交界小説」は、今日では、そのテキスト自体が国内および海外でも入手が難しいことがあって、ここに研究上の障害が従来指摘されていたが、このたびの「社交界小説選集」の刊行により、この分野における英文学研究の進展に対して大きな貢献を行うことができた。さらに、今後における、「社交界小説選集」第2部、および第3部の「社交界小説研究資料編」の刊行に向けて、現在、研究を続行している。
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