研究概要 |
本年度は、イギリス19世紀「社交界小説」の研究を始めて2年目に当たり、この課題に関わる基本的資料の収集と研究の深化に努めた。玉井あきらと服部典之は、昨年度の海外出張により、また今年度における日本国内の大学図書館および各種の研究機関への出張により、ともに収集した資料を整理、検討、読解する作業を通して「社交界小説」の輪郭を明らかにし、この特異な小説のもっているさまざまな多面的重要性の検証と考察を行った。 この研究の成果としては、まず「社交界小説」の作表的作品として、Robert Plumer Ward, Tremaine ; or, The Man of Refinement, Thomas Henry Lister, Grandy, Benjamin Disraeli, Vivian Grey, Marianne Spencer Stanhope, Almack'sを選び出し、それらをRegency Dandyism and the Fashionable Novelと題して、昨年その「第1部」を刊行したが、今年度はこれに引き続いて「第2部」を刊行した。この作品集には、Bulwer-Lytton, Pelham ; or, The Adventures of a Gentleman, Catherine Grace Gore, Cecil ; or The Adventures of a Coxcomb : A Novel, Theodore Edward Hook, Sayings and Doings : A Series of Sketches from Lifeからなる3つの小説が含まれている。「第1部」「第2部」に収録されたこれらの7つの小説は、「社交界小説」を代表する重要な作品であるが、今日それらの原書テキストを入手することが困難である状況を鑑みると、今回のリプリント・コレクションの刊行は学界に大きな貢献を果たすことができたものとして自負できよう。 さらに、小説作品の復刻にあわせて、この社交界小説を研究するための重要な研究書・参考書ならびに基本的資料の復刻をも行った。それらの文献4篇は、「第3部」に"Early Studies"として収録した。
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