本研究は、文法教育を通して、科学形成能力とメタ言語能力の発達を考察するものである。研究初年度である本年は、メタ言語能力の実験基盤となる言語理論と言語獲得研究に関する各種研究会に参加して、資料収集を行うとともに、来年度以降の実験の準備を行った。まず、来年度に実施する、日本人英語学習者のおかす非対格動詞の誤り(" *The accident was happened")を用いて行うメタ言語能力発達に関する実験のために、Yusa (2003) "Passive Unaccusatives in L2 Acquisition" (Japanese/Korean Linguistics 11)を精緻化して、「第二言語獲得における刺激貧困の問題」(出版予定)をまとめた。この論文では、英語学習者が、非対格動詞を受動文で使う現象が、従来仮定されてきた受動化の過剰生成ではなく、ヨーロッパ言語に見られる相助動詞選択の反映であることを示した。さらに、この現象は、第二言語獲得者が、言語経験や母語文法からは帰納できない豊かな言語知識を内在化しており、第二言語獲得におけるプラトンの問題を形成することを示した。また、この誤りには、完結相(telicity)が関与し、完結性が高まると非対格動詞を過去分詞で用いる傾向が高まることを示した。次に、Shyder (1995) "Language Acquisition hand Language Variation"が主張するように、完結相が複合述部(complex predicate)を含む構文に関与しているという説を検証するために、結果構文、場所交替(locative inversion)に関する獲得研究の資料を収集した。現在、完結性と複合述部の関係に関する予備実験を行っている。
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