平成14年度は「アイルランド文化における『トランスレーション』」というテーマに関連して3篇の論文を発行し、2つの口頭発表を行った。9月発行のTranslation as an Exit : Medbh-McGuckian's on Ballycastle Beachは、McGuckianが20世紀前半のロシアの女性詩人Maria Tsvetaevaの作品からの詩行を自分の作品に移植することによって、オリジナルからの多様性の展開を示している様子を、両者の死の詳細な読解によって論じたものである。12月発行の'Most foreign and cherished reader' : On Medbh-McGuckian's Ideas of LanguageはMcGuckianの詩を材料に、「観念」を「翻訳」するメディアとしてだけではなく、それ自体ものとしての意義を使用する状況・場所によって多様に変化させていく言葉の力を探ることによって、歴史的一回限りの存在の重要性を確認する。3月発刊の「Shelmalierにおける『声』について」はMcGuckianの第6詩集における歴史性の問題を過去のテキストの「翻訳」ということをテーマに論じた。また、7月の末にブラジル、サンパウロで開催される世界アイルランド文学研究学会において、McGuckianの詩における肉体性ということをテーマに歴史的一回性の意義の問題を論じたが、そのあとブラジル、アルゼンチンにおけるアイルランド移民の影響をリオデジャネイロ及びブエノスアイレスで取材した。それぞれの土地でコロニーを作り故国の文化を守ると同時に、土地の文化と混ざり合い多彩に展開している模様をこの度はとりわけ舞踊から取材した。
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