1.昨年度に引き続き、データベース検索編集装置を用いて、新聞記事データべースから数量詞による名詞句の限定事例と前後の文脈情報を併せて収集したものを1次資料とするデータベース化を実施した。また、収集したデータベースに基づいて、今年度は、裸数量詞による普通名詞の限定と平行して、浮遊数量詞による普通名詞の限定が実現される文内構造と文脈情報との関連についての分析を開始した。(データベース検索編集システム、新聞令文記事データべースCD-ROM、研究補助費) 2.その結果、裸数詞による普通名詞の唄定については、その実現には、(i)「三銃士」のように特定の指示対象をもった可算的個体集合を表わす、または、(ii)「三者協議」のように「三者」と動名詞句「協議」が表わす2つの集合間にhomomorphismが成立することが必要であること、さらに、(iii)どちらの場合も述語を充たし得る最大参与者を表わす独自の重化構造をもつ点において、個体領域の部分量を表わす類別詞句と区別されることが明らかになった。(言語学関係文献) 3.また、浮遊数量詞による普通名詞の限定については、従来の研究で未解決の問題である主語-目的語の非対称性を中心に検討を加えた。その結果、特に統語的分析が適用されえない主語からの数量詞浮遊が可能な例では、裸数詩の適用条件同様、名詞-浮遊数量詞連結が、述語を充たし得る最大参与者を表すことが観察された。しかも、主語名詞-浮遊数量詞連結はトピック-フォーカス構造をもつとする従来説に反して、提示焦点を形成するという情報構造をもっている場合にのみ成立することが明らかになった。(言語学関係文献) 4.これらの研究成果を国内の研究会等で発表し、討議するとともに、海外の学会でも口頭発表を行った。(調査・研究旅費、外国旅費) 5.これと平行して、海外の研究者からも(数)量化に関する情報の収集に努めた。(外国旅費) 6.その結果、裸数詞、浮遊数量詞という、従来、周辺的現象として捉えられていた量化現象の間に共通する意味論的原則の存在が明らかになり、本研究の最終目的である、(代名詞が未発達の日本語に上組み解明の目処がほぼたった、といってよい。
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