研究概要 |
今年度は調査票を仕上げてアンケート調査を中学校で行う予定でいたが,調査票の内容を決定する段階で,回答者の社会的属性を決めるための社会変数の設定と,その変数の意味を回答を得たあとに解釈するための質問項目が乏しいことに気づいた。そのため急ぎ理論的基盤を充実させるために,文献収集を行い,スタンフォード大学のP.Eckertが提唱するSocial Practice理論を使って社会項目の質問を作りかえることにした。そのため,今年度はアンケート調査を行うところまで進めなかったが,調査票は完成し現在印刷中である。来年度早々に市内の約10の中学校で調査を開始する予定である。また,音声によるアンケートは,調査が煩雑になるおそれがあるため,中止した。 またアンケート調査だけでは鹿児島市内の言語状況の全体像は把握できないので,アルバイトを雇い,70〜80代の老年層7組の自然談話の収集と文字化を行った。談話には老年層の方言特徴が多量に含まれており,非常に良質の資料が集まった。この資料と,数年前に集めた若年層のデータと比較を今後行う予定でいる。 昨年度後半から,名古屋大学の白勢綾子と共同で幼児のアクセント調査を始めたが,今年度もこの調査は継続している。昨年度は絵を見せて,単語の読みを引き出すという手法をとったが,今年度は,親子でゲームをする場面などの自然談話の収集を始めた。この調査から得られる資料も,アンケートの結果と統合させて考察することにより,鹿児島市の言語事情がより明確に記述できるものと考えている。なお白勢との共同調査の結果は,音響学会で3度にわたり発表した。
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