研究分担者 |
池田 賢治 福岡工業大学, 社会環境学部, 講師 (30341473)
井上 奈良彦 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 教授 (90184762)
佐長 健司 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (50253571)
山田 泰子 九州大学, 大学院・法学研究院, 助手 (10336050)
曽野 裕夫 九州大学, 大学院・法学研究院, 助教授 (60272936)
|
研究概要 |
平成14年度中に行った4回の共同研究会(2002/5/28(角松),9/8(飯田、山形),11/10(木佐、佐長),2003/3/29(予定)(池田)(括弧内は報告者名)および、外部講師による3回の特別講演会・研究会(2002/8/9(Loke Wing Fatt氏),12/16(西山芳喜教授),2003/2/20(桑原勇進助教授)(同上)、並行して行われた九州大学における教育ディベートの授業実践(曽野、角松、鎌田)とその総括、論理思考テストの実施によって、種々の知見が得られた。以下、要約的に記す。 (1)「法教育」の目標は、専門法律家育成ではなく「市民生活を行っていくために必要な法的知識・法的思考能力などのいわゆるリーガル・リテラシーの習得」であるが、その「リーガル・リテラシー」の具体的内容が何か、社会生活の種々の局面に応じて具体的に検証されなければならない。本研究では、企業実務に必要なスキル(飯田報告、山形報告)・市民共有の知的基盤(山形報告)・主権者たる国民・住民に奉仕する公務員の必須素養(木佐報告)という観点から、「法教育」の社会的意義の解明に努めた。但しその際、現在の社会状況において、法教育や教育ディベートが養成目標とする「理詰めで考える」能力がそもそも社会で正当な評価を受けているのかという問題(木佐報告)に直面せざるをえなかった。 (2)かかる「法教育」に教育ディベートがなしうる責献を検討するためには、教育ディベートの種々の要素およびその具体的実施方法に分けた検討が必要である。 (a)まず、教育ディベートの有しうる意義として(ア)肯定--否定の対立形式そのものが持つ意義(イ)立論の論理的構成や証拠資料の吟味による批判的思考能力の訓練に加え、(ウ)当該論題に関する非=専門家を説得するために、わかりやすい言葉を使うこと、また具体的事例を多角的な専門的側面から検討する経験に基づく「知のインターフェイス」としての意義(山形報告)がある。 (b)また、ひとくちに教育ディベートといっても、それが提供される局面が例えば2単位の授業なのか、部活動のような場であるかに応じて、期待されるべき成果は異なる。例えば「物事を両面から考える習慣」(上記(ア)に対応)といった成果は、授業に参加する程度でも得られると予想されるが、証拠資料の批判的吟味能力の向上(上記(イ)に対応)等は、部活動として経験するなど、ディベートにより強くコミットしなければ得られない成果であろう。 (c)最後に、市民を対象とする法教育からは若干乖離するが、専門法曹の養成を使命とする法科大学院にとっても、教育ディベートが養成目標とする論理思考能力が前堤条件であることは、本研究のツールとしての論理思考テストに類似した「入学適性試験」のありかたに示されている。ただし、このような試験で試される「論理思考能力」が、社会形成教育の目標たる民主主義社会の成員として必要な資質の育成(佐長報告)にどれだけ資するものであるかは、慎重に検討されなければならない。年度得られた上のような視角に基づく研究を継続し、論理思考テストの結果分析などにより、可能な限り実証的にアプローチすることが、平成15年度における作業課題となるであろう。
|