今年度はドイツ法圏において、国家的に大学改革にもっとも積極的に取組んでいるウィーン大学を中心とするオーストリアの状況を対象として、最近の大学改革の動きの中で、大学の自治がどのように論じられているかを研究した。 オーストリアの高等教育は改革のプロセスにあり、ニューメディア、学生数の実質的増大、教育の国際化・連邦財政の危機と結びついて、大学によって供給される質と競争力を高めることがますます要求されている。1990年に連邦政府は大学改革の目的を「責任と自律」と「効率の改善」にあるとした。1993年の大学組織法は、その最初の重要な改革のステップであり、大学の制度的自律性の根拠を提供するものであった。経営的管理とサービス指向の活動を導入し、それによって効率と質の向上やより高い対費用効果、ひいては資源の有効活用を達成することを可能とするために、広範な政策決定権が連邦大臣から各大学に移された。さらに、1999年に政府は「競争の中の大学」と題する文書を提示して新たな改革の段階に入った。2001年の大学教員についての公務員法の改正と、2002年の大学法(UG)の制定(施行前)が行われた。大学教員についての改正後の公務員法は、教員を契約に基づく雇用関係にするものである。2002年UGでは、大学は大学予算は国庫から支出されるが、公法人として完全な権利能力を有する。大学の決定と責任という点では、大学の自律性により大学経営の効率と自己責任性が求められる。同法は大枠だけを定め、それ以外の事項は大学自身に規律させる。しかし、学の管理運営機関として、科学・文化・経済面で責任者である者、政府・政党に属さない者、そして、当該大学の構成員でない者のうちから選出される5名からなる大学管理会議、教授等から選出される評議会、学長と副学長からなる学長室を定める。 これらの改革は、我が国にみられる国立大学法人化の改革と大きな類似性を有している。しかし、オーストリアで論じられているように、大学外から選出される大学管理会議が大学の管理運営に大きな力を持つことは、大学の自治、ひいては学問の自由に大きな悪影響を与えることが危惧されるところである。
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