本年度の研究は大きく分けて次の2つからなる。 1.国際金融取引に関する紛争解決、特にインターネット時代の紛争解決手続について新たな可能性を研究し、WIPO(世界知的所有権機構)がドメインネーム紛争の解決のための仲裁のために構築しているシステムを参考とすべく、オーストラリア・シドニーで開催されたセミナーに出席した。その結果、e-mailと現物の郵送との組み合わせの仕方等、参考になるいくつかの点があることが判明した。また、ハーグ国際私法会議で作成中の国際裁判管轄等に関する条約についても引き続き研究を進め、特に、合意管轄に焦点を当てて検討を行った。 2.ハーグ国際私法会議で作成された間接保有証券をめぐる準拠法に関する条約について研究を行った。これは、電子化された証券取引においては、もはや物理的な証券所在地は重要性を持たず、所在地法により物権関係を規律するという伝統的ルールを見直し、当事者自治を拡大する(当事者が準拠法を指定することを認める)という方向を示すものであり、より一般な広がりが予想される。
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