国際金融スキームに係る法的問題を国際私法の観点から分析・研究する作業を行った。 まず、準拠法選択に関する問題として、契約及び債権譲渡の準拠法の決定ルールについて、現在の法例7条及び12条の解釈論上の問題点を検討し、諸外国の国際私法立法・条約等を参考に、立法論的研究を行った。主な結論は、契約準拠法の分割・事後的変更の是認を明文化すべきこと、準拠法指定がない場合には最密接関係地法により、それは特徴的給付を行う当事者の常居所地法と推定すべきこと、消費者保護として消費者が常居所地法に基づく保護を求めた場合にはそれを認めるべきことなどである。 それに関連して、ハーグ間接保有証券準拠法条約を研究し、紙媒体を用いないで行う国際的な証券等の担保付取引における担保権の成立・効力の準拠法に関する当事者自治の導入の意義について検討した。その主な結論は、特定の土地との関連性をもって準拠法を定めるサヴィニーの国際私法の方法は当初から契約には妥当しないとされ当事者自治が残されたが、インターネット時代においては当事者自治はその適用領域を拡大して行くことになるということである。 他方、国際金融取引をめぐる紛争の解決手段としての仲裁について研究を行った。特に、インターネットを介したWIPOのドメイン・ネーム仲裁の特徴、さらには、日本の新仲裁法のもとでの国際商事仲裁について、その課題と問題点を検討した。その主な結論は、取引の入口で契約を締結していることがドメイン・ネーム仲裁の基礎であり、同様に契約をベースとする金融取引においてもその手法は採用可能であること、新仲裁法は仲裁地を基軸とし、かつ、内外の仲裁判断を同じ基準で国家法秩序に取り込み点で分かりやすく妥当なものであり、国際金融紛争解決の方法の一つとして仲裁を用いる際の安定したインフラと評価できるということである。
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