研究課題/領域番号 |
14652007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
奥田 安弘 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20135776)
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研究分担者 |
高橋 美加 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (70292810)
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キーワード | 船舶金融 / 船舶先取特権 / アレスト / 資産担保証券 / 便宜置籍船 / 法廷地法 / 旗国法 / 海事詐欺 |
研究概要 |
実質法的側面としては、昨年の海上保険詐欺の類型に続き、本年は船舶金融の場面にトピックを絞って研究を進めた。船舶を利用した大型の貿易取引には巨額の資金が必要となるが、その資金の拠出と資金回収時における詐欺をいかに防ぐかが、主な研究テーマである。船舶に関する費用を担保する手段としては船舶抵当権と船舶先取特権が商法上も認められていが、これらについては1990年代に国際条約が制定され、技術革新や保険のあり方から利害調整の方法が徐々に変容を来していることがわかり、我が国の制度としても変革期に来ていることが分かった。詐欺との関係では、便宜置籍船問題とも関係して、差し押さえる船舶を船主の有する他の船舶まで拡張できないか、という姉妹船の差押えの可否が重要なトピックとして指摘できよう。また別の金融手段として、一種のプロジェクト・ファイナンスも併せて研究対象とした。すなわち船舶の運航から生ずる利益を、運送人・船主の事業から倒産隔離して金融を得る手法である。理屈の上では大型の証券化も可能であろう。詐欺防止の観点からは、いかに倒産隔離を確保するかが鍵となり、次年度も引き続いて検討する予定である。 国際私法および国際民事訴訟法の側面においても、便宜置籍船の問題は重要であり、とくに船舶先取特権などの法定担保物権について、法廷地法主義が主張されているのは注目される。すなわち、従来の旗国法主義に対する疑問だけでなく、仮差押地国の裁判所が原則として本案管轄も有するとする傾向を考えあわせるならば、船舶担保物権の法廷地法主義とは、船舶の現実の所在地法主義を意味しており、海事詐欺に対する迅速な救済を図るためには、かような法廷地法=船舶の現在地法の適用が望ましいと考えられる。これに関連して、1993年の海上先取特権・船舶抵当権条約および1999年の船舶仮差押条約も研究した。
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