研究概要 |
今年度は、日本を含む東アジアにおける知的財産保護の動向と、米国におけるソフトウェア保護の動向を研究の中心にした。 (a)日本を含む東アジアにおける知的財産保護の動向-日本の知的財産権の保護強化の動向を、東アジアにおける知的財産の保護の一環として位置づけて、その意義を考察した。あわせて東アジアの競争政策との関連も検討した。日本の知的財産権の保護強化は、東アジア全体の経済発展のブレーキになるおそれはなく、日本が先頭になって東アジアの財産を強化することが必要であることを強調した。その成果を国際会議で公表する機会があった。 (b)米国におけるソフトウェア保護の動向-マイクロソフトに対する政府訴訟が、和解により、同意判決になったことから、和解の内容を分析した。そこから、OSなどプラットフィーム機能をもつソフトウェアは、今後、取引相手等に、接続情報(API)を適時に公開することが求められるという教訓を読みとった。この成果は、「知的財産法の系譜 小野昌延先生古希記念論文集」の注で詳しく紹介した。また、稗貫俊文「ソフトウェアの保護と競争政策、情報公序論の交錯:序シンポジューム覚書」(北大法学論集53巻4号)では、一般的にソフトウェアの保護のリスク問題に言及した。また、米国では、著作権の保護期間を95年とし、過去の著作物にも遡及適用する著作権法が憲法違反であるという訴訟が市民より提起されていた。連邦最高裁判所は、Eldred et al. v. Ashcroft (January 15, 2003)判決で、これを合憲とする判決を下したので、この判決の分析を行った。
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