昨年から韓国の共同研究者と会談して確認してきたのは、日本に対する韓国側の認識の根底にある不満及び日本側の対韓国認識の間にあるギャップの明確化である。韓国の、日本にたいする不満の根は深く、例えば日本の首相が一回訪問することによって解決できるような性格のものではない、といわれる。しかし、さらに具体的にそれは何かというならば、実態は漠然としたものになってくる。 2003年12月に、本報告者はソウルの韓国外国大学を訪問して、共同研究者金溶徳講師を含む韓国側研究者とのシンポジウムに参加した。そこで報告した内容の概略は、勢力均衡とポーランドの立場に関することであった。歴史的にポーランドは、列強による勢力均衡の犠牲となってきた。勢力均衡を肯定的に捉えるのは、主として強国の立場からのものであり、ポーランドにとってドイツとロシアの勢力均衡がおこなわれると国の分割につながった朝鮮半島の運命も日本、中国あるいはロシアという列強の勢力争いによって決定される傾向があり、これは朝鮮人のナショナリズムに反することとなった、ということであった。サッカーのワールドカップ共同開催以来、日韓両国の交流は民間レベルでも急速に進みつつあるが、しかしそれにしても最も根本的な意識のずれを放置したまま、なし崩しに表面的な友好関係の維持を進めていくならば、将来破綻がおとずれる可能性がある、ということについて話あわれた。 1970年には、ドイツ首相ブラントがポーランドを訪問して徹底的に謝罪するという劇的な国交回復がおこなわれ、これによって始まった友好関係は永続するかに思われた。しかし、今日ドイツ側からだされている旧ドイツ領にたいする権利の要求は、このような謝罪によって始まった両国の友好関係ではあるが、その維持がいかに困難であるかということの例として、日韓関係にも参考にされねばならない。あるいは、これは日本と西洋との間の行動様式の差にまでかかわってくるのかもしれない。来年度の計画は、韓国側の不満の実態、さらには意識の差についてさらに掘り下げていく予定である。
|