研究課題
昨年度までに完了した「技術進歩をともないつつ不比例的に成長する経済の一般逆行列による表現」と「不比例的成長下での生産者、投資者、消費者の行動」の研究について重要な進展があった。特に後者については、経済理論だけでなく経済実験による知見の導入を行った。具体的には、不確実性下での複数均衡の選択についての実験を国内と海外で行った。これは複数均衡が多く発生する「技術進歩をともないつつ不比例的に成長する経済」の分析には重要な課題であり、その基礎実験をできたことは大きな収穫であった。ただし、この実験では不確実性をまったく外生的に発生させているので、「技術進歩をともないつつ不比例的に成長する経済」で内生的に発生するものとは異なるので、現在は不確実性の内生化とその状態での意思決定を考えるためのプログラミングとロジックの研究に従事している。具体的には、不比例的に成長する経済における資金調達問題の基礎として、現物市場と先物市場の簡単な模型を作り、その被験者実験と計算機実験を国際会議(2004年12月)で報告した。3年間の研究を総括すると、「技術進歩をともないつつ不比例的に成長する経済」の個別の問題:産業の相互依存、不確実性下での意思決定、資金調達のそれぞれについて理論と実験の両面で期待以上の成果があった。いっぽう不十分だったのは---個別の研究が思いのほか進んで最初に想定した水準での統合をできなくなったためでもあるが---「技術進歩をともないつつ不比例的に成長する経済」の全体像をフォン・ノイマン・モデルとして統一的に表現することである。もちろん統一的表現についての理解はこの3年で深まったので、共同研究者とともに次の研究資金を得て、この3年で開発した形式的なモデルに各主体の意思決定をうまく導入していっそう高い水準での統合を目指したい。
すべて 2005 2004
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