研究概要 |
今年度の研究は、(1)不平等度尺度についてのアンケートの実施、(2)貧困尺度についての統計分析・論文作成を中心として行った。(2)はアンケート調査の基礎となるものである。 (1)においては、前回の試行調査の補完と新しい要素を検証する調査を行った。以前の調査では、Amiel and Cowellによる先行研究に比べ、不平等尺度を支える諸公理のうち"scale independence"を支持する割合が低かった。今回は数値例を増やして調査した。所与の所得配分が等倍変化しても不平等感が変わらないかどうかを調べたところ、倍率によって結果に差が生じた。また、不平等尺度の計測において前提となる"equivalence scale"がどの程度であると考えられているかを、数値例などで調査した。その結果、消費支出においては、大人一人を1とすると、子どもは0.8〜1程度とみなされた。調査結果の有効性については、次年度さらに検討する予定である。 (2)については、貧困度をBayesianの統計的手法を用いて測ることの有効性を検証し、2002年12月、インド、アラハバード大学で開かれた第9回International Conference of Statistics, Combinatorics and Related Areasにおいて、"Measuring Chronic and Transient Components of Poverty : A Bayesian Approach"(共同研究者との共著)、として報告した。次年度初頭には、海外の専門誌に投稿予定である。Ravallion等による先行研究では、計算された各種の貧困指標が記述統計に拠っており統計的推測ができない。本研究では、統計的推測を可能にするベイズ混合モデルに基き、アメリカや中国の所得データを用いて測定を行った。同じデータをRavallionの手法を用いて測った場合と比べても、ベイズ混合モデルによる測定結果は悪くなく、かつ統計的推測が可能であり、背後の所得分布について特定化をしなくても良い点などを考え合わせれば、我々のモデルの優位性があると考えられる。
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