2004年度は、以下のとおり研究を進めた。 (1)貧困尺度が前提とする諸公理と人々の実感との整合性などを検証するためのアンケートを作成、実施した。アンケート作成において、先行研究であるAmiel and Cowell(1999)の質問票を検討し、調査目的に沿った質問票を作るためにいくつかの改善を施した。 (2)上記アンケート結果を分析した結果を論文として研究紀要向けに執筆した。出版は次年度になる予定である。貧困尺度についてのアンケート調査では、貧困ラインの設定とその提示を以下に行うかが、難しくもあり重要であることが確認された。 (3)前年度より修正を施していた論文"Measuring Chronic and Transient Components of Poverty : A Bayesian Approach"の修正を完成させ、海外の主要なジャーナルに投稿した。採用の可否の連絡はまだない。 (4)不平等尺度についての研究の拡張として、家計経済研究所による『消費生活に関するパネル調査』を用いてゼロ支出がある場合の家計のEngel関数体系をBayesianの手法を用いて推計し、ジニ係数や一般化エントロピー尺度を求めた。結果は、長谷川光、上田和宏、森邦恵、「ゼロ支出データを用いた不平等度の計測」としてまとめ、「『消費生活に関するパネル調査』ユーザー報告会」(2005年1月29日財団法人家計経済研究所)において報告した。さらに、この論文を加筆修正した論文"Measuring Inequality with Zero Expenditures"を海外の主要なジャーナルに投稿する予定である。
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